最後に、もうひとつ。VICE写真展でなにを展示しようか話し合ったとき、大橋さん、電話越しで『実は最近すんごいの撮っちゃったんだけど……首つり。どう?』って提案してくれて。結局それは使わなかったけど、どんな現場だったんですか?
「そうそう。今回の写真集でも入れたよ。プライバシーを考えて目線は入れたけどね。でもオレは別に、そこらの家に忍び込んで見つけたワケでもなくてさ。お母さんと赤ん坊が散歩している午前10時の公園で、たまたま発見しただけで。六本木の公園でロケハンしようと思ってさ。ペンタ67を首からブラ提げながら。ヒマな連中がスポーツ新聞読んでるなかを歩いてたら、ハッと生け垣から首がひょっこり出ちゃってた。『あっ、来た……!』と思って。だからオレが第1発見者。警察来るまでの10分くらいで、三脚ビシッと立ててさ。ブレたくないの。バシッと67で、ガシンッ!ガシンッ!って撮ったよ、彼はすごい迫力だったね」
死んだあとも写真に撮られるって、どういう気分なんでしょうね。
「ハッキリ言って、わからない。そして、死者を冒涜する気も決してないよ。でも、オレが首からカメラをブラ提げた状態で出会っちゃってるんだから。それはもう、撮らざるを得ないでしょう。それはムリだわ。あそこでオレが撮らないのはムリだよと。それは理解して欲しい。それは彼も覚悟のうえで、見つかるような場所でやってるワケだしさ。オレはもう勝手に彼のことを出会いだと思ってる。あの瞬間から我々は友人なの。名前は知らないから、オレは〝首吊りの彼〟ってよく言うんだけど。自分の写真集に姿を残した人っていうのは、たとえ知り合いじゃなかったとしても、たとえ風景的な群衆のなかの1人でも、ひとつの関係ができたと思ってる。だから〝首つりの彼〟も、今ではわりと親しい友人だね」